飲食業界の人手不足は、今や多くのオーナー・店長が頭を抱える経営課題のひとつです。求人を出しても応募が来ない、せっかく採用してもすぐに辞めてしまう――そんな状況が続けば、既存スタッフへの負担が増え、サービス品質が落ち、売上 […]
飲食店の理想の人件費率は?目安30%の罠と利益を最大化する下げ方を徹底解説
2026/03/11
「人件費が高いのはわかっているが、どこをどう削ればいいのかわからない」 「これ以上スタッフを減らしたら、お店が回らなくなるのでは」
飲食店経営において、人件費は売上の約3割を占める最大級のコストです。 しかし、やみくもに削減すればサービス品質の低下やスタッフの離職を招き、かえって経営を悪化させかねません。
大切なのは、まず自店の人件費率が適正かどうかを正しく把握し、その上で「削る」のではなく「最適化する」という視点で改善に取り組むことです。
この記事では、飲食店の人件費率の基本的な考え方から業態別の適正値の目安、人件費率が高くなる原因、そしてサービス品質を落とさずに効果的に下げるための具体的な方法まで、わかりやすく解説します。
この記事をおすすめする方:
- 人件費率が高いと感じているが、どこから手をつければいいかわからない方
- 自店の人件費率が適正かどうか、業態別の目安と比較して確認したい方
- スタッフを減らさずに人件費をコントロールする方法を知りたい方
飲食店の人件費率とは?基本の考え方と計算方法

まず、人件費率の基本的な考え方と、自店の現状を正しく把握するための計算方法を確認しましょう。 正確な現状把握こそが、適切な改善策を打つための第一歩です。
人件費率の意味と計算式
人件費率とは、売上高に対して人件費がどれくらいの割合を占めているかを示す経営指標です。 この数値を確認することで、人件費が経営を圧迫していないか、効率的な人員配置ができているかを客観的に判断できます。
計算式は非常にシンプルです。
人件費率(%)= 人件費 ÷ 売上高 × 100
たとえば、月の売上高が500万円で人件費が150万円の場合、人件費率は30%となります。 まずはこの計算式を使い、自店の現在の人件費率を把握することから始めましょう。
人件費に含まれる項目を正しく把握する
人件費率を正しく算出するためには、「人件費」にどこまでの項目が含まれるのかを正確に理解しておく必要があります。 給与や時給だけでなく、会社が負担する社会保険料や福利厚生費なども含めた総額で計算しなければ、実態より低い数値で安心してしまう危険があります。
| 大項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 給与・賃金 | 正社員の基本給、役員報酬、アルバイト・パートの時給、残業手当・深夜手当・休日出勤手当などの各種手当 |
| 賞与 | 夏・冬などに支給されるボーナス、業績に応じたインセンティブ |
| 法定福利費 | 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料の会社負担分、子ども・子育て拠出金 |
| 福利厚生費 | 交通費(通勤手当)、食事補助(まかない)、健康診断費用、慶弔見舞金 |
| その他 | 退職金、採用にかかる費用(求人広告費など)、研修費用 |
人件費率と人時売上高の違い
人件費率とあわせてよく使われる指標に、「人時売上高(にんじうりあげだか)」があります。 これは従業員1人が1時間あたりにどれだけの売上を生み出したかを示す指標で、店舗の生産性を測るのに非常に有効です。
人件費率が「コスト管理」の視点から人件費の適正さを見る指標であるのに対し、人時売上高は「生産性」の視点からスタッフの働きを評価する指標です。 両方をセットで把握することで、より的確な人員配置の判断ができるようになります。
| 指標名 | 計算式 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 人件費率 | 人件費 ÷ 売上高 × 100 | 売上に対する人件費の割合 |
| 人時売上高 | 売上高 ÷ 総労働時間 | 従業員1人1時間あたりの生産性 |
飲食店の人件費率の目安|業態別の適正値を知る

自店の人件費率を計算できたら、次はその数値が適正かどうかを判断する必要があります。 ここでは、飲食業界全体の一般的な目安と、より実践的な業態別の適正値について解説します。
飲食店全体の人件費率の目安は30%前後
飲食業界全体として、人件費率の目安は売上高の30%前後とされています。 ただし、これはあくまで業界全体の平均的な数値です。 この数字だけを基準にしてしまうと、自店の業態に合わない判断をしてしまう可能性があるため注意が必要です。
業態別の人件費率の適正値一覧
より重要なのは、自店の業態に合った目安を把握することです。 高級レストランとカフェでは、求められるサービスレベルや調理の複雑さがまったく異なるため、適正な人件費率も大きく変わります。 原価とのバランスを見ながら、自店の目標値を設定しましょう。
| 業態 | 人件費率目安 | 原価率目安 | FL比率目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ファストフード・カフェ | 20〜25% | 25〜30% | 45〜55% | 簡易調理やセルフサービスが多く、人件費を抑えやすい |
| ラーメン店 | 25〜30% | 25〜30% | 55〜60% | 調理スピードと回転率の維持が鍵。効率的な人員配置が求められる |
| ファミリーレストラン | 30〜35% | 25〜30% | 55〜60% | 幅広いメニューとサービスレベルの維持に人手がかかる |
| 居酒屋 | 30〜40% | 25〜30% | 60〜65% | 長時間営業と接客の多さから、人件費が高くなりやすい |
| 焼肉・ステーキ店 | 20〜25% | 35〜40% | 55〜65% | 食材原価が高いため、人件費を抑える工夫が必要 |
| 高級業態(レストラン等) | 35〜45% | 25〜35% | 60〜70% | 高品質なサービスが付加価値となるため、人件費率は最も高くなる |
FLコスト(原価+人件費)60%以下が利益確保のライン
人件費率を単独で見るだけでなく、原価(Food)と合わせた「FLコスト」で捉える視点が非常に重要です。 飲食店経営では、このFLコストを売上高の60%以内に抑えることが、利益を確保するための基本ラインとされています。
つまり、食材の原価率が高い焼肉店のような業態では、その分だけ人件費率を低く抑える戦略が必要になります。 逆に、原価率が低いカフェ業態であれば、人件費にやや余裕を持たせることも可能です。 大切なのは、原価と人件費のトータルバランスで利益を管理するという考え方です。
自店の人件費率が適正かどうかを判断する方法
自店の人件費率が適正かどうかは、以下の3ステップで確認できます。
- まず、自店の業態を上の表に当てはめ、目安となる人件費率とFL比率を確認する
- 次に、直近3ヶ月分の売上高・人件費・原価を洗い出し、平均の人件費率とFL比率を算出する
- 算出した自店の数値と業態別の目安を比較し、乖離があるかどうかを把握する
目安を大幅に超えている場合は、次のセクションで解説する「人件費率が高くなる原因」に心当たりがないか、一つずつ確認していきましょう
人件費率が高くなる原因|よくある5つのパターン

人件費率が業態の目安を超えてしまう場合、必ずどこかに原因が潜んでいます。 ここでは、多くの飲食店で見られる代表的な5つのパターンを紹介します。自店に当てはまるものがないか、一つずつ確認してみてください。
| 原因 | チェックポイント |
|---|---|
| 1. 売上に対してシフト人数が多すぎる | 曜日や時間帯ごとの売上予測を立てているか?勘や経験だけでシフトを作成していないか? |
| 2. アイドルタイムの人員配置に無駄がある | ランチとディナーの間の時間帯に必要以上のスタッフがいないか?仕込みや清掃など、アイドルタイムにできる作業を計画的に割り振れているか? |
| 3. 残業や深夜労働の割増賃金が膨らんでいる | 閉店作業に時間がかかりすぎていないか?特定の従業員に業務が集中し、慢性的な残業が発生していないか? |
| 4. スタッフの教育不足でオペレーション効率が低い | 新人スタッフがいつまでも一人で業務をこなせない状態になっていないか?業務マニュアルが整備されておらず、人によって作業スピードに大きな差が出ていないか? |
| 5. 売上の減少に人員調整が追いついていない | 売上が落ちているにもかかわらず、以前と同じ人数でシフトを組んでいないか?天候や周辺イベントなど、短期的な売上変動に柔軟に対応できる体制か? |
これらのパターンは、一つだけでなく複数が同時に発生しているケースも少なくありません。 心当たりがある項目があれば、次のセクションで紹介する具体的な改善策に取り組んでいきましょう。
飲食店の人件費率を効果的に下げる方法7選

人件費率を適正化するためには、具体的な行動が欠かせません。 ここでは、スタッフの負担を増やさずに生産性を高め、結果として人件費率を下げるための効果的な方法を7つご紹介します。
①売上データに基づいた適正シフトを組む
過去の売上データを曜日別・時間帯別に分析し、客数の増減を予測した上でシフトを作成します。 これにより、人員が過剰になる時間帯をなくし、無駄な人件費の発生を防げます。 勘や経験に頼るのではなく、データに基づいた客観的な判断がシフト作成の精度を大きく変えます。
②ピークタイムとアイドルタイムの人員配置にメリハリをつける
ランチやディナーのピークタイムには十分な人員を配置し、お客様を待たせることなく売上を最大化します。 一方、アイドルタイムは最小限の人数で運営し、仕込みや清掃、発注作業などに集中させます。 この「忙しい時は厚く、暇な時は薄く」というメリハリの意識が、人件費の無駄を確実に減らします。
③マルチタスク化でスタッフ一人あたりの生産性を上げる
一人のスタッフが複数のポジションをこなせるようにトレーニングします。 たとえば、ホールスタッフが簡単な調理補助もできるようになれば、急な欠員にも柔軟に対応でき、最小限の人数で店舗を運営することが可能になります。
マルチタスク化はスタッフのスキルアップにもつながり、本人のモチベーション向上や、将来的なキャリアの幅を広げる効果も期待できます。
④オペレーションの見直しで業務のムダを削減する
調理工程、配膳ルート、片付けの手順など、日々の業務フローに潜む無駄な動きや時間を徹底的に洗い出します。 たとえば、厨房内の機器配置や食器の収納場所を最適化するだけでも、作業効率は大きく改善します。
改善のポイントは、店長だけで考えるのではなく、現場のスタッフ全員で意見を出し合うことです。 日々の業務を一番よく知っているのは、現場で働くスタッフ自身です。
⑤セルフオーダーやセルフレジなどIT化で省人化する
人件費率の改善に最も即効性があるのが、ITツールの活用による省人化です。 テーブルオーダーシステムやモバイルオーダーを導入すれば、注文を取る業務が自動化され、ホールスタッフの負担を大幅に軽減できます。 削減できた時間を、より心のこもった接客やお客様とのコミュニケーションに充てることも可能です。
| ITツール | 期待できる効果 |
|---|---|
| セルフオーダーシステム | ホールスタッフの注文業務を削減、注文ミスの防止、外国語対応も可能 |
| セルフレジ・キャッシュレス決済 | 会計業務の時間短縮、現金管理の手間とリスクを軽減 |
| シフト管理システム | 売上予測に基づいた最適シフトの自動作成、シフト作成にかかる店長の時間を削減 |
| 予約管理システム | 電話予約の対応業務を削減、ダブルブッキングの防止 |
⑥無駄な残業を減らす仕組みをつくる
営業終了後の片付けやレジ締め作業の手順をマニュアル化し、誰が担当しても同じ時間で完了できるよう標準化します。 また、発注業務や在庫管理にシステムを導入することも、日々の残業時間を削減する有効な手段です。
残業を減らすことは人件費の削減だけでなく、スタッフのワークライフバランスを守ることにもつながります。 働きやすい環境づくりは、離職率の低下という形で長期的なコスト削減にも貢献します。
⑦人時売上高を指標にして人員配置を最適化する
前述の「人時売上高」を定期的に計測し、目標値を設定して管理しましょう。 人時売上高が低い曜日や時間帯は、人員が多すぎる、またはオペレーション効率に問題がある可能性を示しています。
その原因を特定し、シフトの調整や業務フローの改善を実行することで、人員配置の最適化が着実に進みます。 人件費率という「コスト」の指標と、人時売上高という「生産性」の指標を両輪で管理することが、効果的な人件費コントロールの鍵です。
人件費を下げる際に注意すべきポイント

人件費率を下げようとするあまり、安易な方法に走るとかえって経営を悪化させる危険があります。 コスト削減には「やってはいけないライン」が存在します。ここでは、絶対に避けるべき注意点を解説します。
人件費削減=人を減らすではない
人件費削減と聞くと、すぐに時給を下げたりスタッフの頭数を減らしたりすることを考えがちですが、これは最もリスクの高い方法です。 無理な人員削減は、残ったスタッフの負担を一気に増やし、サービスの質を低下させます。
目指すべきは、「人を減らす」ことではなく、「生産性を高める」ことです。 一人ひとりの働きの効率を上げることで、結果として人件費率が「適正化」される状態をつくることが本来のゴールです。
サービス品質の低下を招かないラインを見極める
人員を減らしすぎた結果、料理の提供が遅れたり、お客様の呼びかけにすぐ対応できなくなれば、顧客満足度は一気に低下します。 顧客離れは売上の減少に直結し、売上が下がればさらに人件費率が悪化するという負のスパイラルに陥ります。
効率化を進める中でも、「お客様が不満を感じないライン」は必ず守らなければなりません。 人件費を削ることで売上まで削ってしまっては、本末転倒です。
スタッフのモチベーションと定着率への配慮
不満を抱えながら働くスタッフから、良いサービスは生まれません。 人件費の適正化は、スタッフの理解と協力があって初めて成功するものです。
ITツール導入の目的を丁寧に説明する、生産性向上に貢献したスタッフを正当に評価する、業務改善の意見を現場から吸い上げる。 こうした配慮を欠かさないことが、モチベーションの維持と定着率の向上につながります。
| 避けるべき削減策 | 起こりうるリスク |
|---|---|
| 一方的な時給の引き下げ | スタッフのモチベーション低下、優秀な人材の離職 |
| 無理な人員削減 | 一人あたりの業務負担の増加、サービス品質と顧客満足度の低下 |
| 必要な教育・研修の削減 | スタッフのスキルが向上せず、生産性の低下やミス・事故の増加 |
| 休憩時間を十分に与えない | 従業員の疲労蓄積と集中力の低下、労働基準法違反のリスク |
人件費の改善は、「削る」のではなく「整える」という意識で取り組むことが、持続的な成果を生む鍵です。
まとめ|人件費率の適正管理が飲食店の利益体質をつくる

飲食店経営における人件費の管理は、単なるコストカットではありません。 自店の業態に合った適正な人件費率の目標を設定し、生産性を高めることで、スタッフの満足度とサービス品質を維持しながら利益体質を強化していく「経営の投資活動」です。
本記事でご紹介した方法を参考に、まずは自店の人件費率の現状把握から始めてみてください。 データに基づいた改善を一つずつ積み重ねていくことが、持続可能な店舗経営への確かな道筋になります。
人件費の見える化とシフト最適化を「da Vinci」で実現する

本記事で解説した「データに基づくシフト作成」や「人件費の可視化」を、手作業で続けるには多くの時間と手間がかかります。
飲食店専用の経営支援ツール「da Vinci(ダ・ヴィンチ)」なら、人件費の管理とシフトの最適化をまとめて実現できます。
売上データに基づいた最適シフトを自動提案 過去の売上実績から需要を予測し、曜日・時間帯ごとに最適な人員配置を自動で提案。店長のシフト作成業務を大幅に削減します。
人件費率・FLコストをリアルタイムで把握 日々の売上と人件費を入力するだけで、人件費率やFLコストが自動算出されます。目安を超えた段階ですぐに気づき、対策を打てる体制が整います。
日次損益と連動した経営判断をサポート 人件費だけでなく、原価・固定費を含めた日次損益を自動で可視化。売上・コスト・利益をトータルで把握し、データに基づいた経営判断をサポートします。
人件費は「削る」のではなく「見える化して最適化する」。 da Vinciで、利益の残る飲食店経営を始めてみませんか。
この記事を書いたライター
ダヴィンチ編集部
「データ入力」から「日次PL」、そして「経営の打ち手」まで、ワンストロークで。
ダ・ヴィンチは、飲食店経営の現場課題を骨の髄まで知るオーナーたちが開発した、現場目線の経営支援ツールです。
飲食店特有の煩雑な作業や“勘どころ”を最短ルートでデジタル化し、日々の売上・原価・人件費などのデータを入力するだけで、毎日のPL(損益計算書)が自動作成され、即座に経営判断に活かせます。
“現場の感覚”と“データ”を融合させ、現場力を最大化するためのツール、それが ダ・ヴィンチ です。詳しくはこちら

